2023/01/29

第3回理研鼎業イノベーションワークショップ

〜自社内のイノベーション創出のためには何が必要か〜

2022年10月26日、「第3回理研鼎業イノベーションワークショップ ~自社内のイノベーション創出のためには何が必要か~」を開催しました。第1回、第2回はオンライン形式での開催でしたが、今回は皆様に会場へお越しいただき対面形式オフラインにて開催することができました。

8社10名の参加者と理研鼎業コーディネーター、ファシリテーターが加わり、A・B・Cの3チームに分かれて行われた当日のワークショップの様子をご紹介します。

理研鼎業代表取締役社長 油谷よりご挨拶

皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。

理研鼎業は理化学研究所(以下、理研)のシーズ(大学や企業等が活用できていない技術や特許に関する有効利用を指す)を世の中に出すこと、産業連携をとり社会実施することを目的に活動をしています。

理研のシーズを実際の社会価値へとつなげていく道筋としては、次の2つが考えられます。

  • 理研の成果を特許にして、それを大企業等にライセンスする
  • 理研が独自で出願した特許を、ベンチャー企業を立ち上げて、ベンチャー企業にライセンスとして実装化する

大企業にライセンスした場合、当該企業は大きな事業に結びつける必要があるため、本当に実のある事業にすることは難しい側面があります。

また、ベンチャー企業の場合は、経営者が自分の人生を賭けて取り組むような方でないと、なかなか上手くはいきません。

産業連携の活動に長らく従事されていた方が「企業が持っているシーズとアカデミアのシーズを掛け合わせて、そこから新たな事業を作ると、非常に可能性の高い道ができる」と以前仰っていました。

この言葉にある通り、今日お集まりいただいた企業様の技術力と、理研のシーズを上手く掛け合わせることで、新たなイノベーションが誕生する可能性があると考えています。企業の新たな事業領域として作り上げるでも良いですし、ジョイントベンチャーのようなものを立ち上げて行う方法もあるでしょう。

イノベーションは起こそうとして起こせるものではなく、教科書もありません。

また、企業ごとの文化や風土も異なると思いますので、まずは様々な視点で議論していただきたいと思います。その上で、今日お集まりいただいた企業様の中から、新たなイノベーションが生まれれば非常にありがたいと思います。 本日はどうぞよろしくお願いいたします。

自己紹介

はじめに、参加したメンバーの相互理解を深めるため、Aチームから順番に参加者と理研鼎業のコーディネーターが1分間ずつ自己紹介を行いました。

オリエンテーション

今回のワークショップの目的は、新規事業が生まれるためにどんな取り組みや仕組みが必要かを検討する事です。良いアイデアを持ち帰ることを目指すのではなく、テーブルで一緒になった方々の考え方やこれまでの経験を、ワークショップを通じてお互い共有し合います。 お互いの意見を引き出すことが、ビジネスアイデアやイノベーションが生まれる仕組みづくりにつながります。

本日経験した事を自社に持ち帰っていただき、自社内のイノベーションの創出につなげていただければと思います。

いのべ場

ワークショップは、第3回も「いのべ場」というフレームワークを活用しました。

チームビルディング

議論の活性化のため、チーム内では参加者それぞれの専門分野や得意領域などについて一人ずつ話しをしました。チームのメンバーがどのようなことに興味、知識、経験があるのかを知ることで、ディスカッションがスムーズに進行し、メンバーへの質問や興味喚起が活発になります。

テーマに関する意見交換

各チーム、参加者同士で

「これまで自社でどのような取り組みを行ってきたか」

「新規事業開発、新サービス立ち上げにおいてどのような課題があるか」

「イノベーションを生むためにどのような意見を交換したいか」

などについて意見交換を実施。各チームの意見交換の様子を全体で共有するために、チームごとに報告する時間を設けました。 意見交換の様子を共有することは、以後の議論の参考にもなります。

要素分解(テーマ分解)

イノベーションが生まれるための仕組みやイノベーションを進めていくために何が必要かなど、新規事業の創出に関するキーワードを、まずは参加者それぞれで考えて抽出を行います。

抽出したキーワードを付箋に書き出して、会場に用意した模造紙にそれぞれが貼っていきました。

アイデア検討・ディスカッション

アイデアを発想するポイントは、思いついたものは紙に書いて吐き出し、一旦忘れて次のことを考えることです。考えたことを頭に残した状態で次のことを考えようとすると、どうしても頭に残ったものが発想の邪魔をしてしまいます。 このポイントを押さえて抽出したアイデアを、チーム内で発表しあいながら、検討やディスカッションを重ねます。

全体共有

全体共有のため、チームごとに発表を行いました。

発表をする際には「どんなアイデアが出たか」ではなく、「どんな議論からイノベーション創出のアイデアやヒントを感じたか」「どのような事に関心が集まり、議論が盛り上がったか」など、ハイライトが共有できる事を意識するようにとアドバイスがありました。 発表を聞いた後各チームのボードを見ることで、ボードの内容やイノベーション創出への理解が一層深まるからです。

【Aチーム】

Aチームは、たくさん出たキーワードの中から、以下の3つのキーワードについての議論で盛り上がりました。

<人材交流>

学生のうちから社会経験をすることで、仕事とはどういうものかを学んで欲しい。

就業体験と学生生活のバランスを保ちつつ、社会人になったらすぐ仕事に入れるくらいがいいのではないか。

<アイデア共有>

過去に失敗をした骨董アイデアをもう一度持ち出すことで、何かイノベーションにつながる可能性があるのでは。

<ナレッジ>

ナレッジと人材育成だけで、会社の力を底上げするには難しいので、どうやって会社の中で人材を育てるか。

これら3つについて、共通して出てくるキーワードは「人材」でした。イノベーションやビジネスアイデアを生むためには、人材が鍵になります。その中でメンバー3名全員が一致した意見は、「人を育てるためには、どうしても時間がかかる」ということでした。 業務をマニュアル化することで、時間をかけず効率的に仕事ができるように育てる方法もあるが、ベースのところを育てるには自分達で考えることも大切であり、最近流行りのジョブ型採用も良いのではないかという議論になりました。

【Bチーム】

Bチームでは、アイデアマトリクスに各自のアイデアをどんどん貼り、意見を出し合いながら進めました。2巡目からは一つのテーマについて各自の経験や思いついた意見を自由に出し合い、アイデアを膨らませています。

<人材関係について>

  • 人材育成に関すること
  • チャレンジ、評価対象となる項目
  • 社内のインフラの整備

アイデアを出してカテゴリーでまとめる作業を行なっていくと、上記のような項目についてディスカッションが活発に行われました。

これらについて、ビジネスアイデアを生むためにはどのようなことが課題になっているのか、要素ごとの結びつきを整理し課題の掘り起こしを実施しました。

チーム内で一番活発に議論したのは、人材の評価制度についてです。

チャレンジを評価する制度があれば、失敗を恐れずにもっとチャレンジする人が増え、結果的に事業がスムーズに運営できるようになり、新規事業も生まれやすくなるのではないかという議論が行われました。

【Cチーム】

「イノベーションは人間が起こすもの、だからこそ失敗を恐れてしまう可能性がある。それをどうやって人間同士のつながりで補うことができるか」というテーマが、Cチームにおける議論の中心でした。

<イノベーションについて>

  • 長期的に見ることと短期的に見ることの重要性
  • チャレンジとサポートの関係
  • 秘匿性と共有性

これらの矛盾をどのように統合するかを考えるのに、「イノベーションが一つのキーになるのではないか」という意見が出ました。 自由を重視すると規律が乱れ、規律に寄せると自由なことをやる人が減るという相関性に悩み、その位置付けが難しいと感じる点でした。

クロージング

【感想】

参加者の皆様からお一人ずつ感想をいただきました。

  • さまざまな業界の色々なアイデアを聞いていると、自分の中で考えの切り替えや方やまとめ方について整理ができ、ビジネスアイデアについて広く考えるきっかけになった
  • さまざまな人の意見を聞き、考え方に触れたことで、自分では思いつかないアイデアやキーワードが聞けて勉強になった
  • 自社内では絶対に出ないアイデアを聞き、自社を客観的に見ることができてよかった
  • 人材育成や教育など、他の企業様も悩んでいることは一緒だと思った
  • ワークショップの内容を社内に持ち帰り共有したい

など、皆様今回のワークショップの参加によって多くの気付きや発見があり、満足いただいたようです。

理研鼎業 企業共創部 山橋よりご挨拶

ワークショップやグループ討論の基本は聞くことだと思います。

先ほど、皆様の感想からも参加した事で、他企業の声を聞く事が出来たなどのコメントを頂き、開催して良かったと感じています。

今後も、このような異業種交流の場を企画したいと思っておりますので、是非ともご参加下さい。また、今回学んだ手法を自社に持ち帰り、皆様の事業のイノベーションに活用していただけたら幸いです。